おじさんのママ

by 永松平蔵

「お疲れさま。おじさんは頑張ってるよ」

これは人生最初で最後のご褒美なのだろうか？


私は生まれて今まで、女性に触れた事もない。
彼女いない歴＝年齢なんて生易しいものじゃない。
ずっと下を向いて生きてきた様なものだ。

確かに私にだって性欲がない訳ではない。
寧ろ強い方だったと思う。
女性に想いを寄せた事だってあるし、何度か数える程だけれど、積極的になろうとしたりもした。
話がつまらないからなのか。
服装がダサいからなのか。
顔がお世辞にも良いとは言えないからなのか。
この体躯が、世間一般で言う肥満で、だらしのない身体だからなのか。
おそらく、その全てだろう。
全くといって良いほど、相手にすらされない。
どころか、挨拶すら無視される始末だ。

それでも真面目に。
実直に。
日々、仕事をし、帰って食事をして寝る。
生物として生きてるだけ、の様な生活。
それでも、こうして健康で、白髪の混じったこの歳まで、周囲に煙たがられていようが、失職せず生きてこれた。
この事に感謝すらしている。

人並みの幸せ？
親孝行？
確かに人から見れば不幸せだろう。
親不孝者と呼ばれる現状かもしれない。

でも親孝行に関しては、さほど問題はないと思う。
それは、私の弟。
私と同じ血が通ってるのかと思えるほど、優秀で出来の良い弟。
彼が私の分まで親孝行をしてくれている。
そう、私は彼に任せたのだ。
彼には私の分も、幸せになって欲しい、とすら思う。

しかし…。
どうしてだろうか。
ふと気がつくと、暗い部屋で独り、突発的に涙が溢れて止まらなくなる。
どこで間違ったのだろうか。
なぜ、私はこうなってしまったのか。
ただ、真面目に毎日を生きているつもりなのに…。

…疲れた…。
私はその日、相当に疲れた顔をしていたのだろう。
もしかしたら死相すら出ていたのかもしれない。
「おじさん、大丈夫？」
連休で帰省した弟の娘。つまり姪にあたる少女に、心配されてしまった。

「あぁ…大丈夫だよ。ありがとう、優しいね」
努めて明るく、顔の表情筋が痛くなる程の笑顔で答えたつもりだった。
しかし…。
彼女は何も言わずに僕を抱きしめてくれた。

「お疲れさま。大丈夫だよ…おじさん」

「あ…あぁ…」
不思議と涙が溢れて、止まらなくなってしまった。
まずい…。
少女に抱きついて泣く中年男性…。
最悪だ。
肉親とはいえ、いや寧ろ肉親だからこそ、まずいかもしれない。
慌てて彼女を引き剥がす。

「…あぁ、兄貴。お疲れさん」
リビングから弟が顔を覗かせた。
「！…おう。今日はたくさん動いたから、先、風呂入るな」
慌てて顔を伏せ、足早に風呂場に逃げ込んだ。


脱衣所で息を整えると、再び涙が溢れてきた。
なんだか…惨めだ…。
気分を変えようと、服を脱ぎ風呂に入った。
風呂の温かさで、少し心も和む。
癒されていると小さな影が脱衣所で動いているのに気がついた。

「ちょ…」
「おじさん、一緒にお風呂入ろ」

「いやいやいやいや…まずいから！！」
慌てて追い出そうとするものの、目はがっつりと彼女の裸体を見てしまう。
美しい…。
天使の様な可憐さと神々しさ。
私の様な醜き者が触れていい訳がない。…当たり前なのだが。
触れたら法に触れる…以上に、私自身が溶けてなくなってしまうのではないか？

「なんかおじさん、すっごく辛そうだったから…」
「え…」
彼女の優しさに、美しい優しさに当てられ、邪な自分を嫌悪する。
確かにコンプレックスを拗らせ、ロリコンと呼ばれる人種ではあるが。
性対象として見てはいけない。当たり前なのだが。
そんな事を思いながらも、下半身はガチガチに反応してしまう。

「おじさん…よしよし。大丈夫だよ」

頭を撫でられ、すぐ目の前に薄ピンク色のぷっくりした乳首が。
邪な感情、性欲、それらを抱き、純粋に彼女の優しさに触れる事が出来ない。
私はつくづく見た目だけでなく、全てが醜いな…。
そんな自己嫌悪を抱きながらも、彼女の体温を感じて目がチカチカする程に興奮している。

「…ごめん。そんなに優しくされるほど、おじさんは…良くないよ」

「…ふふ。おじさん、ぐりぐりして可愛い」
私の頭を撫でながら、母性すら感じる優しい微笑みを浮かべる彼女。
あぁ…。
これは夢なのかもしれない。
それか、もう私は死んでるのかもしれない。
最後の最後に、最高の夢をみているのかもな…。

[イラスト]

「きゃっ！…おじさん、赤ちゃんみたい。ん…くすぐったい」
私は彼女の乳首にしゃぶりついた。
ちゅうちゅうと、赤ん坊の様に彼女の乳首を吸う。

彼女はくすぐったさに耐えながら、私を励まし続けた。