路地裏での邂逅
by Alchimie
王都圏第二都市、鉱山都市グランツ。父さんの仕事の都合で王都圏第一都市王都から引っ越してきて2年になった。
最初、グランツに引っ越すと言われた時は怖かった。グランツの周囲には魔物が時たま出現する森に囲まれており、そうで無くとも鉱山資源を狙って周囲の勢力圏が襲撃して来ると言う話しは学校に入って王都圏勢力についての授業でされていたからだ。
けど、実際に引っ越してきてその恐怖感は空回りだった。確かに魔物や他勢力の襲撃はあるにはあるが、グランツの防衛隊が屈強、とにかく屈強だったからだ。これも王都に居た時に聞いたことがあったな、とここに来てから思い出した。『グランツは土地柄、襲撃を受けやすい所で、だからこそ防衛隊の戦力が王都並に、下手したら実戦経験を考えたらグランツの方が上なぐらいだ』と言われていたのを。
王都は全てが静かで厳かな雰囲気があり、それが好きだった。けどグランツはその真逆で、真夜中の少しの時間以外はずーっと活気が、悪く言えばうるさいしかなり埃っぽい。来た当初はその差に驚いて3日はまともに寝れなかったけど、今では逆にこのうるささが心地よいと思えてくるぐらいだった。
それにグランツには王都に無い良いところがまだまだ沢山ある。例えばこれ、飲食店の路地裏を少し探すだけでその店の調理時に発生したカスに群がる多種多様な虫を観察出来るからだ。王都でももちろん虫は見れたが、こんなに様々な生態の虫を一度に見れたと言うことに僕は感動を覚え、虫の出る季節の休日はこうして一日ずっとグランツ中で虫の観察をしているのだ。などと思っているとほら、これは去年見ることが出来なかった、図鑑でしか見たことの無い―――
「ねぇキミ、こんな所でしゃがみ込んで何してるの?」
頭上から声がした。顔を上げるといつの間にか誰かがそこに居た。が、逆光でよく見えない。声からしてメス性だの言うのは分かるのだが。
「ん~~~?・・・っあ、オオグロアカカマだ。珍しい~」
目の前のメス性の人も気付いたらしい、そんな声を出していた。
僕はようやく慣れてきた目でその声の主を見た。深紫色の腰まである髪に、黒く長くそして先端にワンポイントで白色がある尻尾、そして額に一本生えている赤黄色の角。僕はその声の主を知っている。
「グランツのホムンクルスの、クルス・・・」
思わず声に出してしまっていた。彼女の事は王都に居た時に噂では聞いて居た。グランツ周辺で保護した違法な存在、戦闘用の調整を施されたホムンクルス。それが色々とあってグランツの特殊事態時限定戦力としてグランツ防衛隊に居るというのを。
「んっ?キミ、ワタシの事を知ってくれてるんだ?嬉しいねぇ~」
クルスがニッコリと笑う。その笑顔からはとても戦うために造られた生物兵器とは思えない人懐こさを感じた。
「え、えと、うん・・・。僕は元々王都に住んでたけど、向こうでもクルスさんの事、は・・・有名・・・・・・だか、ら・・・」
話しながら、ふとクルスの顔の下方向に視線が行った。
そこにはクルスの胸元が、もっと言えば胸元からある二つの大きな胸の肉が目に入った。このくらいの大きさなら、グランツに居るメス性でも沢山見る。が、問題はそこでは無い。
逆光に照らされて、その二つの胸の肉の先端に一つずつ、小さいながらも確かに存在を主張している突起が陰影を以て主張している事に気付いてしまったのだ。
「ん~?どうしたの?・・・ん?あぁ~」
クルスがすぐに僕の目線の先に気付き、笑みを含んだ声を出して大袈裟に頷いた。それに釣られてクルスの胸も小刻みに揺れ、否応無く僕の目線はそちらに行ってしまった。
「やっぱそれぐらいの歳でもコレ、興味あるんだ~」
意地悪な笑みをしながらクルスもしゃがみ込み、僕と視線を合わせながら両手で自らその大きな二つの胸の肉を下から持ち上げて揺らして見せる。そんな唐突な光景に僕は混乱しながらも、確かに下腹部辺りが熱くなるのを自覚した。
「・・・っアハハ!ごめんね、からかっちゃって」
そう言って笑いながらクルスが立った。
「流石にキミぐらいの歳だとさ、ちょっかい掛けると団長に怒られちゃうからさぁ~」
言いながら僕の方に手を差し伸べて来たので、その手を取って僕も立ち上がった。
「まーけど、ワタシも悪ノリしてからかっちゃったのもあるし、」
そう言いながら僕のもう片方の手も握って来た、と思った次の瞬間、
僕の両の手は、クルスの手に引っ張られて、それぞれ片方ずつ、クルスのその大きな胸の肉へ服越しに深々と沈め込まれ―――
「ん~~~、っはい」
クルスの手が僕の手を上下左右に揺さぶり、それに併せて僕の両の手のひらには筆舌にし難い柔らかさの暴力の感覚があり、それが恐らく5~6秒ほどした後に解放された。
「からかったお詫び。けど他のメス性の人の胸をそんなまじまじ見ちゃダメだよ~?失礼だからね~?」
僕の目を見ながらそう言い終わると、クルスは僕に背を向けて表通りの方に歩き出した。
「じゃあね、少年。暗くなると危ないから路地裏ばっか居ちゃダメだよ~」
そう言いながら背中越に手を振って行ってしまった。
僕は自分の両手を見た。さっき起きた柔らかい感覚の暴力は現実だったのだろうか。
オオグロアカカマは、もう居なかった。
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