ウチの娘クルス(不満げのすがた)
by Alchimie
王都圏第二都市 鉱山都市グランツ。
そのグランツの防衛隊本部内宿舎の食堂で、一人の若者と、この王都防衛隊グランツ支部内で『保護観察処分扱い』で所属している存在その物が違法な『戦闘用ホムンクルス』のクルスが、一つの卓に向かい合って座っていた。
「ねぇ、最近冷たくな~い?」
クルスが青年に向けて不満げに漏らす。若者、防衛隊グランツ支部に入隊して3年目のその純ヒト属のオス性は「そ、そうかな・・・?」と曖昧な返事をするだけだった。
「もっと出番欲しいんだけどー?」
クルスが更にもう一段詰めてくる。
そう、この出番とは、何を隠そうも『性欲処理係としての出番』である。
戦闘用ホムンクルスであるクルスはサキュバス属の種族固有器官であるサキュバス子宮を組み込まれた存在であり、戦争時の前線娼婦をして兵士のオス性達を相手しつつ、自分は吸い取った精液をサキュバス子宮で消化する、もしくは相手方の基地に娼婦として潜り込み大将首や上級兵と交性した際にサキュバス子宮で容赦無く吸精し、腹の奥底にある精力の一滴も残らずに吸い付くし殺す、と言った役割も目指し造られていた。
グランツの防衛隊に所属となってからは『グランツのオス性隊員でクルスと交性してないヤツは居ない』と言われるぐらいに全員とまぐわっており、この若者もその一人である。
ただ、この若者は少しばかり事情が違った。
18歳で学校を卒業し防衛隊グランツ支部に入隊してすぐの頃、グランツの領域外すぐ近くの森に居た所を保護され何やかんやあってクルスが所属する事になった。そして『食事』や『つまみ食い』と称して防衛隊のオス性達と交性し始めた頃、この若者はそんな噂を聞き付けて一人寝ていたクルスの部屋に向かい、童貞を捨てさせてもらっていたのだった。それもクルスがグランツに来てまだ交性した人数が1桁の時にである。
若者はその時の感覚、もとい快楽が脳に焼き付き、クルスもその若者の活きの良い精液と必死に腰を振るいただひたすらに快楽を得ようとしてる姿が気に入り、両者が暇な時はクルスの部屋は勿論、外出許可日も外の宿屋で日が沈んで再び昇るまでずっと交わっていたりする仲で、ようはクルスのお気に入りの一人であった。
ただ最近は若者が仕事や日課の訓練が増えたのは当然あるが、防衛隊グランツ支部の近くにある八百屋の娘と交際関係になったのである。
無論、その事はクルスも知っている。し、その事を歓迎した内の一人であったのだが。それ以来、若者がどうも自分に対してよそよそしいのが面白くないのである。交際相手が出来たからこそ、それはそれとして自分の相手をしてくれなくなるのは勿論道理として理解しているのだが、それ以外の日常会話でもどこか避けてる様な雰囲気を感じるのだ。
「ねぇ~、聞いてる~?」
クルスが若者にまた声を掛ける。若者はすぐに「あ、あぁ。ごめんな、ちょっと近くにある陣地試験で考え込んでてさ・・・」と作り笑いで生返事をしては悩むようにして顔を下げる、素振りをして一瞬だけ視線をクルス側にやる。
クルスが普段着用している黒くも薄く肌に張り付く様な素材の布地、それから透けて見えているのだ、クルスの豊満な胸部の柔肉の頂に存在する一点の高い山、乳首が。
見間違いでは無い。確かに乳首が透けてるのだ。
確かに、これまでも乳首の形が多少分かるぐらいに布地が張っていたり、乳首が刺激されて乳液が滲み出しそれがキッカケでハッキリと乳首が透けてきたり、と言うのは何度もあったし何度も目撃した。
だが今回のこれは違う、何もしてないのに乳首の形が、何ならその周辺の少し盛り上がった乳輪の輪郭も、それらを彩る桃色も、透けて見えているのだ。
八百屋の娘と交際関係になって身体も含めて付き合いはとても良好だったのだが、ここ最近は自分の事で一杯一杯になってしまい八百屋の娘とはしばらくまともに会えて居ない。そんな状況に加えてやはりどうしても性欲と言うものは発散出来なければ否応なしに大きくなってしまい、そんな中でクルスを見かける度に安易な考えが頭を過ってしまうのだ。クルスにも交際の事は心から歓迎して貰ったと言うのにそんな邪な考えを抱くのは不義理と思うとどうにもクルスを避けるような言動を取ってしまい、今回このように詰められてしまっていると言うのは百も承知であると言うのに、その目の前の光景に目線が、オス性としての本能がそれから逃げられなくなっているのだった。
そしてこれは実は一から全てクルスが仕込んだ罠である。
交際相手の事を思って自分と交性を避けるようになったのは分かるが、日常生活から防衛隊としての会話も避ける様な素振りをされるのは面白くないからと、こうして詰めるフリをして普段のより薄い布地を着用し敢えて乳首が透けて見えるようにし、更には卓の上に両の乳房を乗せて強調するようにし、向こうの態度に不満を持ってる事を伝えて罪悪感を覚えさせつつオス性としての本能に揺られて苦悩するように仕組んだ、クルスなりの悪魔的所業であったのだ。
「うん、ゴメン。その、あの娘に会えてないからってさ、その、溜まってた欲をクルスにぶつければ良いやとか安易に思っちゃってさ、それは良くないよなって思って考えいようにしてたら、クルスを怒らせる様な態度になってた、と言うのか・・・」
「・・・そ、ようやくちゃんと言ってくれたね。それなら別に良いよ。ホントは別に怒ってないし」
実際に心から出た、クルスの赦しの言葉であった。
が、
「けどやっぱさ~、しばらーく冷たかったじゃん?」
クルスの顔に笑みが浮かんだ。ただし、それは契約の代わりに対価を提示する悪魔の様に。
「今度は態度で示してもらおっかな~?」
この刻は若者の休暇日の早朝であり、クルスから赦しを貰えたのは日が沈みきった後であった。
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