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2025-10-01 15:34:40 に投稿
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淫呪の指輪

by 猫又小町

「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁ……!!」

 何も無い空間を、シオンは逃げていた。息を切らして必死に。脇目も振らず。もっとも、複雑に水彩の色が溶け合っただけの景色など、ないも同然だが。
 何から逃げているのか。この気配は――きっと『淫魔』だ。色欲の使徒たる魔物ども。下級? 中級? 上級? あるいは――――。
 だが、それならば余計にシオンが逃げる理由はないはずだった。彼女は誇り高き淫魔ハンター。それも、最高位であるS級のハンターだ。
 そのはずが、気付けばシオンは幼い頃の、まだ何の力も持っていなかった頃の姿に自分自身が戻っていることに気付いた。だから逃げているのだろうか。迫り来る、得体の知れない闇から。

 ――ぇ――――ちゃ――――――

「えっ……?」

 微かに聞こえた声に足が止まる。聞き覚えのある、懐かしい、今となっては哀しさばかりを孕む声だった。
 妹の声だ。シオンには――かつて妹がいた。
 声の方を振り返る。その瞬間、シオンは闇に呑み込まれた。あとはどこまでも、堕ちてゆく感覚……。静まりかえった奈落の最中、妹の声はもう、嘘だったかのように聞こえない。





◇  ◇  ◇




「…………はっ!!」

 夢から覚めたシオンは、まず錯覚として残った浮遊感を沈めなければ、身体を起こすことができなかった。軽く頭を振り、額に手を当てながら緩慢にベッドの縁へ腰掛ける。それなりの宿泊費をかけて泊まっている宿屋の寝具は質も良く、敷き布団の弾性がお尻を押し返してきた。
 自らの身体を眺め降ろし……と言うには、大きすぎる乳房が邪魔で無理なのだが。少なくとも、自分のよく知る大人の身体であることを確かめて、ほっとひと息をつく。
 先ほどまでのことは、夢だったらしい。とんだ悪夢だ。直前の依頼が上級淫魔の討伐で苦労した分、疲れが出たのだろうか。ただ、過去のことを夢に見るのはシオンにとってそれほど珍しいことではない。もっとも、ここまで露骨な内容のものは、そうあるものではないが。

「ふー…………っっ」

 大きく深呼吸をすると、双つの爆乳が上下し、それはびっしょりと掻いた汗でシャツを貼り付けている分、より肉感的に彩られていた。
 鮮やかな紫色のショートヘアと、端正に整った美貌。異性からはもちろん、同性からも、あるいは異種からも注目を集めるシオンの容姿は絶世の美女、と評されて差し支えないものだ。
 加えて、身体は瑞々しく肉付き、色香の漂う媚肉をこれでもかと詰め込まれている。目立ちすぎる爆乳峰は言うまでもなく、戦士らしく引き締まっていながらもほどよく牝脂の乗った腰回りや、お腹。むっちりと張り詰めた太股に、そこから続く尻房への稜線。
 もはや、誰しもの欲望を集めるために生まれてきたのではないか、と思えてしまうほどフェティッシュな肢体の造形だった。
 そんな美女が引き締めた表情に陰を落とし、わずかな身震いを走らせている。ここが宿屋の個室でなければ、不届き者が寄ってきていたかもしれない。
 シオンは勢い良く立ち上がると、纏っていた陰鬱な雰囲気を払い落とすかのように、自らの頬をパン、パン、と軽く叩き、薄く笑顔を作った。

「まだちょっと早いですけど、街を見に行きましょう」

 直前の依頼は高難易度の、上級淫魔の討伐。すなわち、報酬の実入りが良かったのだ。そのこともあって、普段ならば考えもしないワンランク上の宿屋に泊まり、束の間のリフレッシュをしよう、と決めているのだから、奇妙な夢に惑わされて気分が落ち込むのは損に違いない。
 ……そんな夢を見ずとも、淫魔への復讐心はシオンの根底にある。この先も、忘れることなどありはしない。シオンの肉体を、精神を、未来を、何もかも変えていったあの淫魔。最愛の妹を奪ったあの――女王級の淫魔。
 いつか必ず、淫魔を狩り尽くす。そして、彼の淫らな女王に、復讐を。それこそが、淫魔ハンターとしてシオンがある理由だった。変わることのない、初まりの動機だ。

 薄手のシャツにマフラー。ホットパンツといつもの服装に着替え、シオンは街の涼しい風を火照りの残る身体に浴びていた。背伸びをすると、グッと乳房が持ち上がり、ただでさえパツパツに張り詰めているクロップドホルターの生地が肌色を透かすほどに伸びきる。
 無防備な仕草にもそれほど羞恥を覚えずに済んでいるのは、まだ時間が早く、人通りが少ないおかげか。ノースリーブ、かつ、ヘソ出しの衣装で、薄らと筋肉を湛えた美しい腹筋を惜しげもなく披露しているシオンだが、それでも普段、衆目を集めるのははち切れそうに実った肉メロンなのだ。
 シオンとて勿論、そういった視線には敏感に気付かざるを得ない。特に、最も視られているであろう乳房などは視線を自覚するとゾクゾクと妖しい痺れを帯び始め、乳芯から淫靡な熱が滲み出てくるほど。
 つまるところ、シオンが街を歩き、無数の欲望が纏わりついてこない、というのはどんな理由であろうと、それだけで貴重な時間なのだ。幸い、仕事熱心な商人たちは早い時間からでも店を開け始めている。
 じっくりと魔道具を見て回れそうだ、と思うだけでも、晴れやかな気分が差し込んできた。最悪に近かった目覚めの気分は忘れて、今はただ、純粋に買い物を楽しもう、と。





◇  ◇  ◇





(今日は質の良い商品が多いですね)

 しばらく魔道具店を見て回ったものの、これといった掘り出し物は見つからず、シオンは未だ手ぶらのままだ。ただそれは品物の質が低い、ということでは決してなく、シオンはS級淫魔ハンターという立場ゆえに、彼女が求める魔道具は相応に質が高い。それは、一般的な基準からすれば高すぎるほどに。
 だからこそ『掘り出し物』を探すのだが、掘り出し物はあくまで掘り出し物。手に入らない時の方が多いことは畢竟である。

「やあやあ、そこの――綺麗なお姉さん」

「…………」

「ああ、ちょっと、無視しないで! 行かないで!」

「え? あ、わ、私のことですか。すみません。話しかけられてると思わなくて……」

 店の前を通りかかったシオンに古物商が軽薄に声をかけるも、危うく、シオンはそのまま通り過ぎてゆくところだった。慌てて引き留めた古物商に対して、シオンはパチパチと目をしばたかせ、困ったような表情を浮かべている。

「コホン! お姉さんにピッタリの品物があるんだけど、どうかな? 安くしとくよ?」

「ええと、アクセサリーですか?」

「そ。この指輪。どう? 似合うと思うけどな~」

 指輪、と聞いて、シオンの意識は自然と今身に着けている指輪、に向かった。それは特殊な魔道具であり、『不感の指輪』と呼ばれるものだ。
 この指輪がなければ、シオンはまともに日常生活を送ることが難しい。かつて女王級の淫魔に捕えられ、躾けられた身体の感度は、ひと言で言ってしまえば異常だ。
 指輪が無ければ服も着れない。衣擦れするだけで愛撫されるような状態に陥るためだ。そよ風に撫でられれば膝は震え腰が砕ける。
 食事ではまるで口内を触手で蹂躙されているかのような感覚。入浴は感じすぎるあまり自分の身体だというのに洗うどころかお湯で身体を洗い流すことにさえ抵抗を感じてしまう。性感帯に僅かにでも刺激を与えてしまえば一瞬で理性は消し飛びその場でオナニーに耽ってしまったこともあった。
 この魔道具はそんな全身が”性感帯の結晶”とも言える身体を平均的な感度の数倍ほどの敏感さに抑えるシオンにとっての命綱だった。
 しかし、それでも数倍。淫魔と闘うには致命的とも言える。とはいえ視線一つであっても鳥肌を立ててしまう感度ではあるが、数十倍という規格外の異常値と比べれば遥かにマシである。
 シオンは自身の生活の全てを『不感の指輪』に依存していると言っても過言ではなかった。
 生活の行動全てが性欲を擽る。どんな出来事であっても性欲は高まり常に身体の火照りを纏っているような状態が続いていた。
 戦闘や日常の際には、魔道具を使って常に魔力を消費しながら感度を抑えていなければならない。もはやそれは、シオンにとって宿命にも等しい。

「……難しい顔してるけど、気に入らなかった感じかな?」

「……ッ、い、いえ、そんなことは! ちょっと着けてみて良いですか!?」

「いいよ。はい、どうぞ」

 思考が表情に出てしまっていたのか、気を遣った愛想笑いを向けてきた古物商に、シオンは慌てて柔らかな態度を取り繕う。
 指輪は嵌めてみると、なんと、誂えたかのようにシオンの指のサイズにピッタリだった。デザインも確かに、悪くない。深い赤色に頼ったシンプルさはゴテゴテと複雑に飾られているよりも好むところで、流し見た値札もお手頃のように思えた。

(何も買わずに帰るのももったいないですし、この指輪くらいなら買っても良いかもしれません)

 何となく惹かれるところがあり、シオンは直感的にその指輪を気に入っていた。シンプルに、アクセサリーとして購入を決める。
 購買意欲の満たされた乙女の表情は華の綻ぶように晴れていた。成果なく引き上げるよりは、少しでも楽しい気分を持ち帰りたい、なんて考えも手伝ったのかもしれない。

「これ、買いますね。このまま着けていっても良いですか?」

「お! 流石お姉さんお目が高いね~! まいどあり~」

 代金を支払って、指輪を着けたまま露店を離れる。
 街には、少しずつ本来の賑わいが広がりつつあった。一度宿に戻ろう、と、シオンはやや足早に歩を進める。買った指輪が一瞬、ほんの一瞬だけ魔力の気配を発した気がしたが、あまりにも刹那的な出来事すぎて、シオンですら足を止めるには至らなかったほど…………。





◇  ◇  ◇





 魔道具、古物。そういった品物の中には、時折、とんでもない代物が混じっていることがある。
 古来からの曰く付きの品であったり、邪神を呼び寄せる儀式の触媒であったり。
 慣れている者ならば大抵は見分けがつくのだが、内包されている異常性が小規模であると――逆に見破りにくい、厄介な性質がある。

「――っ、あ、あぁ――――っっ、あぁっ、はぁぁっっ……! あぁぁっ……!」

 端的に言ってしまえば、シオンは外れを引いた。露店で勧められた指輪は、特殊な効力を持った呪いの指輪であったのだ。

「あぁ、あ、ああーーーっっ、熱い……っ、あついぃい……っっ……!?」

 宿屋の一室で踊りくねる豊満な女体。官能の細波が肌の表面を覆い、寄せては返す。髪束の先端から汗の雫が滴り、足下を濡らした。
 戦慄く両腕を持ち上げ、シオンは霞む視界の中で2つの指輪を見比べる。新しく身に着けてしまった呪いの指輪の効力は、強制的な発情。感度の上昇。それだけの単純なものだ。ただ、出力において不感の指輪のそれを遙かに上回っている上に、元より異常な感度の肉体を持つシオンにとっては相性最悪の装備品であった。

「はぁぁぁッ……!! くはぁぁぁッ……!!」

 呪いの装備らしく、ピッタリと嵌まった指輪は力尽くではどうやっても外すことができない。どころか、身体に力を入れると、あちこちで快感が弾けてそれだけで絶頂してしまうような有様だ。
 仮にこの指輪が力尽くで外せるものだったとしても、今のシオンには不可能だった。悶える淫魔ハンターの背が仰け反り、ぶるんっ、と揺れ撓む爆乳が窮屈そうに切なさを訴える。
 自らの身体を抱きしめるようにしながら、シオンは蕩けてゆく頭で必死に解決策を探ろうとした。しかし、絶え間なく押し寄せる桃色の波濤には抗えない。為す術もない痺れに、真っ先に思考が無力化される。

「ッぅうあぁあぁ……!」

 呪いの発動が部屋に戻ってきてからであったのが、唯一の幸運か。何もしていないのに、小さな絶頂が積み重なる。感度が際限なく上昇してゆく。
 身を捩り、ひとり悶えるシオンだが、そうして感じ入る動作にすら快楽の種が隠されている。衣擦れが起こると、肌が甘く疼くのだ。たまらないもどかしさが薄膜のように吸い付いてきて、神経へ浸透する。
 もはやそれこそ、指1本を動かすにも躊躇わなければならない。なのに、刺激に付随する身体の痙攣や反応は抑えられるものではない。
 快楽に反応を示すことが次の快楽へと繋がる負のスパイラルに、シオンはズブズブと嵌まり込んでいっていた。
 最悪の悪循環だった。もはやどうすればいいのかさえ分からないまま、彼女は悦びの体液を全身から垂れ流す他ない。
 シャツの薄生地に乳肌が擦れるのなどは、細かな無数の手に愛撫されているかのようだ。乳悦が駆け巡り、淫らな熱が膨らみきった肉風船を破裂させんとする。すでに十分すぎる量感すら増し、ずっしりと熟れ始める調教済みの爆乳。
 おそらく人類最高峰クラスであろう発育過剰な乳果実。その重みに耐えかねたか、S級淫魔ハンターの美乙女はその場に膝を折った。淫呪に屈し、無様に倒れ伏す――と、情けないだけでなく、それは悪手でもあった。何せ、床と身体の間に圧し潰れた肉乳房や、カーペットの繊毛に撫でられた肌に、途方もない快美が炸裂したのだから。

「あああぁあぁ……ッ! ひっ、ひぃぃ……ッ!?」

 淫魔の調教によって異常な発達をさせられた性感細胞は、呪いにより更に過剰な活性状態へと陥った。
 性欲が沸騰する。全身に張り巡らされた太く強靭な性感神経の脈動。
 身動ぎですら今のシオンには劇薬だ。浅く短い間隔で繰り返される呼吸、その一つ一つでさえ絶頂への要因であった。
 グラマラスなその身がゾクゾクと鳥肌を立てれば、細胞が弾け飛ぶような感覚と共に恥辱を極めてしまう。
 呼吸、身動ぎ、衣擦れ、痙攣。全ての動作、仕草が連鎖していく。収まることはない。絶頂の直後であっても、余韻の身震いだけで快楽の爆発を引き起こしオーガズムを迎えていた。
 だというのに甘い刺激は抜ける気配がない。神経に快楽が滞留し残り続け、次なるアクメを助長する。
 身体中のあちこちで軽い絶頂が引き起こされ、それらが重なり合いより深く強力なアクメとなって彼女を襲った。
 さざ波のように反響し合った快楽が相乗的により深い爆発を引き起こし、これまで経験したことのない泥沼の絶頂地獄へとシオンを誘う。

「はぁ”ぁ”ッ、お”ッ……ん、ン“ン”ぅ”……、くくぅうぅ~~~ッッ!!?」

 床をくねり転がり、体勢を変えながらもんどり打つシオンだ。そうすると、衣擦れの愛撫も床からの愛撫も加速し、快感が無限に募ってゆくことになる。

「ん”んぁ”ッ、こんッ、こんなぁぁぁ……ッッ……!!」

 甘えるような嬌声が個室に響く。ドアを閉めていてさえ、廊下に声が漏れ聞こえないかと心配になる声量だ。
 それだけ、シオンが快感に対して制御を失っている証拠でもある。抑えようにも抑えようのない法悦が、聡明な少女の理性までをも犯していた。

「あぁぁッッ……!! ダメダメぇッ、ダメェェ……あああああ…………!!」

 カクカクと腰を突き上げ、ホットパンツをも貫通する勢いでイキ潮を撒き散らすシオン。盛大な絶頂を迎えてなお空腰は止まらず、惨めな少女は官能に踊り狂い続ける。仰け反りながらつま先をピンと伸ばし、あるいは、乳房を庇おうと身悶えたがために、ブリッジを極めるかのような姿勢に。
 
「あ”ぁ”……ぁ”……イクッ……イッてますぅぅ……ッッ…………」

 しばらくは暴れ、悩ましくくねっていた肉感肢体だが、やがて、あまりの快感に指先ひとつ動かせなくなり、ピクピクと痙攣するばかりの媚肉塊と化す。
 そんな状況に陥ってすら、神経は激悦に苛まれ続けていた。服を着ているだけで、床と接触しているだけで、何もしなくともキモチイイ。すなわち、快感から逃れる術がない。目を見開き、唇をパクパクと開閉させて、ただただイク。イキまくる。訳が分からなくなるくらいに。

 プシィィィ…………ッッ、プシュッ、プシプシッ……!

 飛沫く恥液から濃密に漂う牝の匂いに、クラリと意識が遠のいた。自らが散々に振り撒いている背徳の香りだ。
 そしてそのまま、感覚の全てが曖昧になり、何度もイキ果てる感覚が脳内でリフレインされる。
 やがて視界が、染まって、真っ白に――そのままシオンは快楽の濁流に流され、意識は暗闇の奥底へと沈んでいった。





ーーー続きはFANBOXで公開予定ですーーー

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