あるバイオロイドの物語
by くだB
あるバイオロイドがいた。
彼女は工業用に作られた、ごく普通の量産型バイオロイドの一体だった。
しかし、世は激動の時代。
人々の不満が、人間に逆らうことのできないバイオロイド達に向かうのは自然な事だった。
あらゆる人間の怒り、憎しみが拷問という形で彼女達に降りかかった。
多くのバイオロイド達が穢され、壊され、廃棄されていった。
しかし、工業用に頑丈に作られた彼女の肉体は、あらゆる責苦を受けて尚、正常に機能し続けた。
鉄虫との戦争と、ヒュプノス病によって人類が滅びるまで、彼女の苦痛に満ちた日々は続いた。
それから長い月日が経った。
生き残ったバイオロイド達によって、ある一人の人間の生存者が発見された。
後に司令官と呼ばれることになる彼は、バイオロイド達の未来の為、そして最後の人類としての責務を果たす為、生き残った者達を導いた。
そして彼女と出会った。
出会った当初、彼女は彼の事を信用していなかった。
しかし、長く共に旅をする中で、彼は過去の人間達とは違うということに気付いた。
彼は、バイオロイドを個人として尊重し、虐げるような真似は決してしなかった。
彼女の心はしだいに融解していき、いつしか彼女もまた、他の多くのバイオロイド達と同じように、彼に強く惹かれるようになった。
しかし、彼の周りには、自分よりはるかに優秀なバイオロイド達がいた。
魅力的な肉体も戦闘力もなく、ましてや傷物の自分が彼に愛されるなど夢物語でしかないだろうと考えていた。
だから、彼から婚姻の申し出を受けた時、彼女は心底驚いた。
彼は、つらい過去を持つにもかかわらず、自分と共に歩んでくれる彼女のその心に惚れたのだと言った。
どんな傷があろうと関係ない。その傷ごと愛してみせると言った。
彼女が彼の申し出を受け入れると、彼は涙を流して喜んだ。
彼女達の婚姻を、他のバイオロイド達は心から祝福してくれた。
特製のウェディングドレスを彼女に送り、二人を祝う豪華な結婚式を開いてくれた。
そして、皆が見守る中、二人は永遠の愛を誓う熱いキスを交わすと、初めての初夜を迎えた。
それから程なくして、彼女は彼との子供を身ごもった。
彼女の肉体の状態からしてみれば、それはまさしく奇跡のようなものだった。
バイオロイドと人間の間に生まれる新たな命。
それはきっと、人とバイオロイドが共に歩む、新しい時代の希望となるだろう。
おすすめのDL同人作品
同人作品PR