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2023-05-17 19:15:37 に投稿
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触手沼にハマったシウリルちゃん

by ほししも

 一般的にダンジョンとは周囲の環境から独立し固有の発達を見せ、「とがった変化」を遂げた環境や生態系のことを指す。その独自性からダンジョン内部は未知の有益な生物や物質を蓄えることが多く、またそれらは逆に外部環境へ悪影響を及ぼす場合もあるため、人類はダンジョンの調査・攻略に対し積極的な姿勢を取っている。
 しかし、その攻略に際し生じる「犠牲」は無視できない。貴重な人材が損耗する点のみならず、探索者がダンジョンに「食われ」、「育てる」点は問題だ。ダンジョンは決して閉じ切った環境ではない。外部から侵入した敵対生物を逆に攻略し捕食することで、学習し進化を遂げ、さらに厄介な問題となって外部環境を脅かすのである。
 故に探索者には強さが求められる。生命力、膂力、知力、精神力、そして魔力。如何なるダンジョンにも呑まれない強さを手に入れた探索者は富と名声を得られ、人類の華となって崇め奉られるのだ。
 ──そんな探索業界の中で、密かに噂されるダンジョンがここ、ETD(エロトラップダンジョン)である。このダンジョンの独自性は、数あるダンジョンの中でも珍妙に過ぎた。敵対生物の強さによって攻略されてしまうのならば、強さを無価値にするダンジョンに成ればいい──とでも言わんばかりに、ETDは稀少な進化を遂げたのだ。
 それが渾名の由来でもある、エロ特化である。侵入可能なのは生物のメスのみであり、罠で殺しも魔物に食わせもせず、性的に搦め捕ることでその精力を糧とするのだ。ダンジョン内で一般的に生じる命の奪い合いに備え、侵入者が性的に鍛えていることは稀である。そこを突いたETDは、侵入者の命ではなく精力を性的に奪い、中毒性のある快楽で犯し尽くした後、なんとその者を生きて外に帰すのである。中毒となった者は快楽を忘れられず、無事を装ってダンジョン保持とその攻略継続を望み、内部の真実を秘匿してまたダンジョンに潜るのだ。エサは強くなるどころか弱くなる。減るどころか増えていく。ETDはそうやって、今日までその存在を維持してきた。
 ──そんなダンジョンの噂を嗅ぎつけた哀れな蝶がまた一p…いや違う。この子はこのダンジョンがエロいことなど何も知らない。ただ長期間攻略を阻み続けた「禁忌のダンジョン」として、ETDに偶然にも辿り着いた。めちゃくちゃ強くて、高難易度ダンジョンを片っ端から渡り歩いていただけだ。実は良いとこのお嬢様、シウリル。才能と環境に恵まれ努力家で精霊にも愛され、その銀糸の髪は月明りにも雪風にも喩えられ、子供と大人の狭間の美しい肢体に玉の肌は、誰の手にも染まっていなかった。少し抜けていて鋭敏で「強いだけ」の小娘なんて、このETDにとっては極上の獲物に過ぎなかった。
 何も知らないシウリルは、毒が検知されなかった淡い桃色の霧の中を進んでいく。少しずつ鋭くなっていく肌の触感が、自身の知覚魔法の副作用だと信じて疑わないまま。先に待つ触手とか機械とかサキュバスとかスライムとかの攻略法も知らないまま──。

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