デザイナー志望のおてつだいのおんなのこ その4
by もっさうめし
部屋に戻った。
もんちゃんの裸。
抱きしめたときの感触。
おおきくなったままのぼくのおちんちん。
ぼくはもんちゃんとの距離を埋めたくて、手を伸ばす。
口にするのを止められた名前。
あの感覚がやってくる。
「ああっ!」
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そして後始末をする。でも、もっとしたいとぼくのおちんちんが。
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そのあと数回…。ぼくは眠った。
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あたしは決めていた。
隠し事が見つかってしまった。それは次の隠し事が見つかることの恐怖につながる。
もうこの家には…ぺーくんのそばには、居続けられない。
いろいろ見せてあげたから、自家発電の燃料は十分。ペーくんは午前2時には疲れて熟睡しているはず。
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あたしは、マスターキーでそっと部屋に入ると、手紙ともう一冊の本を机に置いた。
話せなかったもう一つの隠し事。
見れば、その理由がわかるはず。
寝顔を見る。
ほっぺにチューしたい。
でも、あたしにその資格はないの。
「おやすみ。そして…、さよならあたしの王子様。」
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夢にも、もんちゃんが出てきた。
でも、いくら追いかけても届かない。
やっと、追い付いて抱きしめようとしたとき、
悲しそうな表情で笑って、消えた。
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目が覚めた。
「夢だった、よかった…。」
部屋の中に小さな違和感。
ぼくの机の上に手紙と本が。
手紙を開ける。
『ぺーくんの気持ちはうれしかったよ。でもあたし、汚れてしまっているの。ありがと。ごめんね。元気で。さよなら。』
なにこれ?どういうこと?
置いてあったタイトルは「妖精狩り」。
たしかにあの時、『一度目の撮影』って言ってた。
『二度目の撮影』もあったんだ。
ぼくが見つけてしまった本の続き。
小さなもんちゃん。同じ構図。
だけど…。だけど泣き顔のもんちゃんは、おとなに弄ばれていた。
ぼくはもんちゃんの気持ちを何もわかってなかった。
嫌な予感。
「もんちゃん!もんちゃん!」
テーブルに置かれたサンドイッチ。
もんちゃんがいない。
探さなきゃ。
もんちゃん!もんちゃん!
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リュックに最小限のものを詰め込んで家出してきた。
鹿児島には帰れない。
券売機で表示されたいちばん高額の切符を買って、始発で北に向かう。
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すこし眠っちゃったみたい。
朝日で輝く海が見え、トンネルに入る。またまどろむ。
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折り返しらしい。よだれ垂らして寝てたら、車掌さんに揺さぶられて目が覚めた。
ペーくん起きたかな。サンドイッチ食べたかな。
ここはどこだろう。
降りた駅から、海が見えた。
海に向かって歩く。
:
海に向かう途中で運悪くどしゃぶりの雨。
ずぶぬれになりながらも、どこにも行く場所はないことを実感していた。
神社で雨宿りしながら後悔している。
そうよね。あたしの唯一の居場所があの家だったんだもの。
それに、ぺーくんのいない場所でもう生きていけない。
あかちゃんのときからずっといっしょで、これからもずっと一緒だと思ってた。
「ぺーくん。ぺーくん。」
べそをかきながら、呼んでいた。
「もんちゃん…。」
顔をあげると、ぺーくんが立っていた。
まぼろし?
「涙を拭いて。ほら。」
ハンカチを渡される。本物…?どうして?
「あたし、涙なんかどうでもいいぐらいびしょ濡れなんですけど。」
おどけてみようとするけど、涙声になってしまう。
あたし、ここがどこかもわからないのに。
どうしてぺーくんにはわかったの?
「もんちゃんのところに行きたいと強く思ったから。」
この王子様は、どうして簡単に乙女心につき刺さる言葉が言えるのか。
「帰ろ。ぼくらのおうちに。」
だってあたし、あたし…。
「ね?」
笑顔。
ああ、あたし汚れた女だと蔑まされてもこの笑顔のそばにいたい…。
「うん、帰る。帰ろ。」
あたし、小学生の男の子にすがって泣いてた。
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もんちゃんはぼくの力がなくなったと思っていたみたいだけど、ずっと人前では使わなかっただけ。
連れて帰ることは簡単だった。もんちゃんも帰りたいと思ってくれたから。
もんちゃんは笑顔もかわいいけど、泣いてるのもかわいい。
ぼくのなかにあった、もんちゃんのいろいろな表情がみたいという気持ちに気付かされた。
脱衣所でずぶぬれのもんちゃんをタオルで拭いて、乾いた服に着替えさせる。
服はパパのTシャツとジャージを貸してあげた。
キッチンにつれてきて、あったかいミルクを飲ませて、お風呂を沸かす。
いままで、もんちゃんにやってもらったことを、今日はぼくがしてあげる。
「家出しようとしてごめんなさい。」
落ち着いたみたいで、謝り始めた。
「ぼくこそごめんなさい。もんちゃんのつらい過去のことも知らずに…。」
「あたし、ペーくんに言えなかったの。『一度目の撮影』のあとの話は。」
もんちゃんが続ける。
「あの時、あたしはオトナたちに…。だから、あたしはぺーくんにそんなことをしたくなかったの。」
「…。」
「でも。あたしはペーくんを想って…。」
「知ってる。」
「え?」
「ぼく、強い想いは感じ取ってしまうんだ。夜中にぼくを呼ぶ声も、そのあとの気持ちいいのも…。」
「…。軽蔑してるよね。」
「ううん。ぼくのことを男の人として見てくれてうれしかった。」
「あたし、ぺーくんみたいに感じとれないから聞いていい?」
「何を?」
「このあいだ、お部屋に鍵かけて、あたしの名前叫んだとき。あれは、今のあたしを呼んだの?それとも、あのころの、写真のあたしを呼んだの?」
「…。ぼくの知ってるもんちゃんは、目の前にいる人だけだよ。」
「ぺーくん…。」
(ピーピー「お風呂がわきました」ピーピー「お風呂がわきました」)
「はくしょん!」
わざとらしいくしゃみをすると、もんちゃんは立ち上がった。
「あたし入ってくるね。」
キッチンを出る直前、立ち止まって振り返る。
「ねえ、ぺーくん…。一緒に入らない?」
もんちゃんがぼくの知らない顔を見せていた。
-つづく-
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