科学探偵団 くいしんぼう担当のおんなのこ その3
by もっさうめし
「おじちゃん、今までどうもありがとう。これあげる。むこうで開けてきて。」
「ありがとね。おじちゃんからもプレゼントあるけど、デザート食べた後でね。」
「なんだろ。」
「まずは軽く食べてて。ポテトはいま揚げてるよ。」
「うん。」
「プレゼント楽しみだなあ。」
:
誘惑に負けて眠り薬の入ったジュースを用意してしまった。
小一時間は寝てしまう効果はある。
でも私はまだ自分がどうしたいのかわからなかった。
:
厨房でプレゼントを開けてみる。
牛刀。ダマスカス鋼の模様が美しい。
エプロン。ヤマモトハンバーガーのロゴが刺繍してある。手縫いだ。
そして手紙。
:
-おじちゃんはあたしのピンチをいつでも助けてくれるヒーローでした。
ー今までありがとう。
-手にさえ一度も触れてくれなかったけど、あたし、おじちゃんに抱き付きたい気持ちでいっぱいでした。
-でも、そんなことしたらおじちゃんが困るから…。
-だけど、最後かもしれないから、お願いをします。
-あたしブスだからうれしくないかもしれないけど、おじちゃんの思い出をあたしの体に残してほしいです。
:
世界がゆがむ。これ以上読み続けられない。。
手を触れるだけで壊れる関係だった。
彼女の覚悟と精一杯の背伸び。
だが、彼女はまだ子供で私は大人なのだ。
これは純粋さを弄んだ私への罰だ。
私の心はようやく決まった。
:
鍵付きの保湿キャビネットから、アルバムとネガを取り出す。
モデルの仕事名目なので撮ってはいた。
でも、最近は現像だけでプリントしていない。
いっしょに過ごすだけ。それだけでよかった。
ページをめくる。懐かしい写真。
:
メガネフレームを決めるための撮影会。
いつの間にかキス待ち顔ばかり。
できたメガネをはじめてかけての一言。
「はっきり顔見えたけど、そこそこね、おじちゃん。」
:
フライヤーのブザーが現実に引き戻す。
ポテトを盛ってテーブルへ。
彼女は眠っている。
きっと彼女の寝顔が見られるのも最初で最後。
シャッターを切る。
指先に張られた絆創膏の愛おしさ。
ごちそうが冷めるといけない。
目が覚めてから用意しよう。
寝息を立てる彼女の姿を目覚めるまで眺めていた。
-つづく-
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