若草村の迷子のおんなのこ
by もっさうめし
潰れかけの工場に入った下請けの仕事。
【安全動作を厳重に確認するため、幼児の洗浄データを1セット6時間で10本取得すること。】
この納入条件が難問だった。
苦し紛れに募集してみると…。
♪ピンポ~ン
インターホンに映る小さな女の子。
「はい、何の御用ですか?」
「おふろのおしごとができるのはここですか?」
急いで応接室に通して話を聞くことにした。
聞き出せたのはこんな内容だった。
旅をしてママとパパのいる若草村に帰ろうとしていること。
タムタムが病気になってお金が必要なこと。
フワットはお湯が出せないので寒くなってからは顔しか洗っていないこと。
よくわからんが、保護者なしのようだ。
いろいろと目をつぶってお願いすることに。
「一度座ると、止められないからトイレに行っておいてね」
「パンツもぬぐの?」
「そうだね」
実際に座ってもらうと、デリケートゾーンの洗浄に特化したものだと、よくわかる。
「じゃあはじめるよ」
スキャンを行い対象の形態を把握し、水流、送風、振動による洗浄が始まる。
「だいじょうぶかな?」
「ちょっとくすぐったいけど、へいきよ」
AIは皮膚の重なり方を学習しながら、より深くへ汚れを探っていく。
5分。心悸亢進。呼吸数増加。
顔を赤らめ、目を閉じてなにかをこらえている。
10分。筋肉緊張。そして弛緩。
生まれてはじめての感覚に戸惑いがみられる。
瞳には涙を浮かべているが、試験は終わらない。
12分。
センサー値は洗浄の完了を表している。
それでもAIは旺盛な学習意欲を示している。
「あっ、あ、ああ、あー、ああっ」
言葉にならない発声で彼女も湧き起こる感覚を学んでいることがわかる。
30分過ぎに意識を失ったため、試験は中止となった。
(応募者なしで交渉だな…。)
データの秘匿処理をしながら、彼女の秘匿方法についても考えを巡らせていた。
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