●媛県松山近郊 私塾 塾生
by もっさうめし
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満月の夜。
昼間約束した通り、ハッパは畑にきた。
『なんだ、またあいつ遅刻か。』
座ってタバコを取り出そうとしたとき、
『ハッパ。』
振り向くとそこには、
大根の精が立っていた。
『わし、十六になったんよ。おとなになったんよ。』
月明かりに照らされた肌は
予想外に白く輝いていた。
ハッパは、あっけにとられていたが、急にてれくさくなり、横を向いた。
『バカ、赤ん坊みたいななりして。下の毛もはえちゃいねえくせに。何がおとなだよ。』
『このドスケベ。どこみとるんや。』
『おまえがみせびらかしたんだろうが。』
『そやったそやった、ごめんごめん。』
そういうと、隣に腰を下ろす。
『わしのおかあちゃんも、はえとらん。ダイコンにははえんのや。』
『たしかに、はえてたら漬物もまずそうに見えるな。』
『あのな。』
『うん?』
『ダイコンはおおきくなったら、ひっこぬかれて、いちばにだされるやん?』
『ああ。』
『ダイガクにきいたんよ。おんなは十六でおとななんやと。』
『…。』
『あのな。』
『うん?』
『わし、ハッパに、ひっこぬかれたい。』
『!』
『もう、わしをすきじゃなくなったかの?』
ハッパの答えを聞くことはなかった。
次の問いかけを発することもなかった。
重ねられた唇が収穫のはじまりの合図だった。
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