X型射精管理アンドロイド2
by 饗庭淵
ベンガルドラと共に227日間の遭難生活を過ごした男の映画がある。
彼はやがてその共同生活でトラに対し親近感を覚える。
ヒトは社会性の動物だからだ。
トラは違う。
本能はときに誤作動を起こす。
イルカは溺れたヒトを助けることがあるが、これは「細長くジタバタするもの」を溺れている仲間と誤認したがゆえの行動だ。
常に想定外の事態は起こりうる。
ただし、もとより存在しない本能は誤作動しようもない。
ある雄のアホウドリは雌の模型に9年間求愛活動を続けた。
ヒトたる彼もまた同じことをしている。
同種の異性の姿をしている――それも理想的な姿をしている〈彼女〉に。
理性では、知識では、彼もまた理解している。
彼女は決して同種ではなく、生物ですらない。
これは無意味な行為だと。
だが本能は知らない。
遺伝子は〈彼女〉のような存在を予測していない。
ゆえに期待を止むことはできない。
彼女は確かに高度なAIと対人インターフェイスを備えているが、それらは明確な目的によって設計されている。
男の本能を誤作動させるには十分だが、彼女自身の誤作動によって彼の期待するものが得られる可能性は皆無である。
その努力は、路傍の石に話しかけ返事を期待するようなものだ。
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