AKIBA-2050_05
by ばりかん
あたしは『ミーナ』、個体識別番号TYPE-n 8998982-A。
プロフェッサーに改造される前まではただ単に従順なメイドロイドだった。
意識も単純、人間として振舞いたいなど意識外だった。
だが、プロフェッサーはそんなあたしの心を拡張してくれた。好奇心を持ち、向上心を持つ存在へと変えてくれた。
それまで自分を『わたし』と呼称していたが『あたし』と呼ぶ自由さまで与えてくれた。
プロフェッサーには感謝してもしきれないくらい。
セクサロイドとしてあたしが生きる道を選んだのもあたしの自由意志だ。
もちろんあたしに生殖機能はない。人口子宮はプロフェッサーもまだ開発中だという。
でもあたしは人間の『愛』に興味があった。
男女のあんな激しい行為の中にも根底に『愛』がある。
今のマスターもあたしを抱くとき、愛情をもって抱いてくれる。それが不思議。
そう、あたしは人間ではないのに。
…こうして冷静に考えるあたしとは別に、あたしのメモリにエミュレートしてくるあたしがいる。
美奈さんだ。
マスターの好みに合わせるため、わたしは寝ているマスターから美奈さんの記憶を取り出し、模倣することにした。
その仮想人格があたしの基本データに侵入してきてるのだ。
プロフェッサーにバックアップ衛星を介して尋ねたら、「いずれ二つの人格は統合され、新たな人格を形成するだろう。」
とのことだった。
その美奈さんの個性はあたしとはまた違う見解のようだ。
交信してみよう…。
「美奈さん」
「わ!お人形さん!いきなり話しかけないでよ、びっくりしたー。」
「いえ、この状況をどうお考えかと思いまして。」
「うーん、お兄ちゃんとセッ〇スするのは別にいいの。わたしもこうされたいなーって思ってたし。」
「でも?」
「最近お兄ちゃん、欲求不満なのかなー?って感じるの。とっても激しいし。」
「そうですか?あたしの許容値内ですよ?」
「お人形さんはそうかもしれないけど、わたし、自分が壊れちゃうかも、って思うと不安だし、それに…」
「それに?」
「お兄ちゃんになら壊されてもいいかなー、って感じるときもあるの。」
「…複雑ですね。」
「0か1じゃないのよねー、感情って。あなたとひとつになって初めて分かったわ。」
「プロフェッサーはいずれ、あたしたちの感情は統合されると言ってましたが…。」
「まぁ仕方ないよね。お兄ちゃんのわたしたちに対する態度次第かもね。あ、お人形さん。」
「はい?」
「お兄ちゃんを幸せにしたい?」
「ええ、マスターなしでは生きて行けません。」
「でもね、お兄ちゃんに本当に幸せになる機会が来たら、身を引くのも選択のひとつだよ?」
「え…?」
「それじゃね、お人形さん、話せて良かった。」
そして、『美奈さん』は沈黙した。
『身を引くのも選択のひとつだよ?』
その言葉があたしの中でループする。
それが想定するものは今のあたしには分からない。
でも、そういう状況になったら、あたしは本当に身を引けるのか?
マスターの本当の幸せって?
つい思い悩んでしまう。
「おーい、ミーナさーん…。」
あたしが内部演算に夢中になってると不意に抱き付かれる感触が!
あたしは反射的に対象の顔面あたりに裏拳を放っていた!
それは確実に命中した。対象を目視で確認…って、マスター!?
先ほどの音声も分析…ああ~、コレ、マスターの声だ~。
「ま、マスター、すみません、あたしったら…!」
「いいのいいの、またまた考え事してるとこにすまなかったね。」
「はい…、どうもこういう接し方をされるのは苦手でして…。」
「うん、しゃーない。おいで。」
あたしはマスターに促されてベッドに行く。セッ〇スという名の『お勤め』の始まりだ。
マスターはあたしのワンピースのボタンをひとつひとつゆっくりと外す。
そこに美奈さん由来の『感情』が湧き上がってくる。『羞恥心』だ。
「ま、マスター、自分で脱げますよぅ。」
「だーめ、さっきの裏拳の罰として今日はミーナは俺の言いなり。」
「パンツもですか?恥ずかしいですぅ~。」
「ミーナ、顔、真っ赤だぞー、おや、あそこがヌルヌルだ~♪」
「言わないで下さい~!!」
不随意な機能の働きため、あたしは真っ赤な顔を両手で押さえる。このときの反応の大半は美奈さんのものだ。
と、内部演算で美奈さんがあたしにアクセスしてくる。
「お人形さーん、恥ずかしいよぅ~」
「分かりますけどガマンして下さいね」
と、すっぽんぽんになったあたしの躰をマスターはいとも簡単に持ち上げ、ベッドに横たえる。
「あとは…そうそう、マクラマクラっと…。」
マスターはマクラをあたしの腰に下に据える。正常位で性欲を解消するようだ。
「お人形さん!恥ずかしいってば!そんな冷静に対処しないで!」
はいはい、美奈さん、わかりました。あたしはマスターを見上げると…
「あ、あの、マスター、恥ずかしいです…。」
「いつもの正常位だよ?恥ずかしいの?」
「あ、あの…いえ、なんでもないです…。」
「今日のミーナは変だよなぁ。なんかアップデートでもした?」
「いえ、内部演算的な問題で…あの…マスター?」
「じゃあこうすると、もっと恥ずかしいかな?」
と、クン〇リングスをしてきた。柔らかで温かい感触があたしの性器に刺激を与える…。
あたしの中では美奈さんが大パニックだ。
「ひゃああああ!お人形さん!お人形さん!!ダメだから!汚いよ!!」
「人間ではないので老廃物は出ません。」
「そこ、ダメ!敏感なとこなの!ゾクゾクするのぉ!」
「ええ、2048レベルの刺激が来てますね。」
「数値で言うのやめて!恥ずかしいし、何が何だか分かんなくなるのぉ!!」
あたしは美奈さんの感情レベルに変換し、マスターに返す。
「あ、あの、マスター、そこは…ちょっと…」
「ん?恥ずかしい?」
「はい、それにゾクゾクしちゃって…頭の中が真っ白くなってきます…」
「そっか、オル〇スムスが来そうなのかな?」
「は、はい…たぶん…。」
「よーし、ミーナ、最後までイッちゃえ!」
「ああん…!」
あたし自身、この行為に『恥ずかしさ』は感じない。
あくまでも『刺激データ』の蓄積に過ぎないのだから。
だが、興味深いことに美奈さんも、マスターも、とても興奮している。
マスターの性器は固く反り返ってすらいる。
「お、お人形さん…わたし…来る、来るよぉ、もうイクイクイクぅぅ!!!!」
「わかりました。あたしの躰を解放します、味わってください。」
「お兄ちゃ…、ま、マスター、あたし、イク、イキます来ちゃううぅぅぅ!」
「よし、ミーナ、イッちゃえ!!」
「あああああああああ~!」
あたしだけ冷静で、ちょっとシラケた心持ちだが、そのあとマスターに散々可愛がってもらえたので良しとします。
行為を終え、美奈さんのエミュレートはメモリの通常領域に格納された。
そのとき、美奈さんはあたしにこう言った。
「セクサロイドって、羨ましい…。」
え?
人間でもないあたしが『羨ましい』?
理解不能です。
でもこれが、この『気持ち』が分かるようになったとき、あたしは人間に近くなれるのでしょう。
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