AKIBA-2049_06 ハロウィン

by ばりかん

　ハロウィンが間近に迫ったある日、ミーナが俺に問う。
「マスター、ハロウィンってなんなんです？」
俺が具体的な答えに窮してると、ミーナは、バックアップ衛星とアクセスしていた。そして…、
「ああ、SHIBUYAに行ってお酒飲んで軽トラひっくり返してウェーイってやるんですね♪」
…また古いデータだな、2026年の「大消失」でも消えないデータなんてあったのか？
「それ以前に廃棄されたスパコンのメモリーをサルベージしたんですよ。面白かったですよ？」
あー、なるほどなぁ。あの頃のバックアップは電磁攻撃に弱いSSDじゃなくHDDかテープだったもんな。
でも流石にそれは偏ってるぞ。
「？　どうしてです？」
いやー、実際のところは「トリック・オア・トリート」と言いながら近所を巡り、お菓子をもらう
海外の習慣なんだ。
「トリック…なんです？英語ですか？」
ああ、「お菓子くれないとイタズラしちゃうぞ」って感じの意味だ。
「イタズラ…、あたしがするんですか？ご奉仕ですか？」
違う違う、そういった性的な意味じゃないよ。お菓子を貰うための常套句なんだ。
「そうなんですか、あたし、興味が出てきました！」
お菓子も食べないのにか？
「ええ、楽しそうじゃないですか♪」
ふふっ、なんかそう見てるとミーナは普通の女の子みたいだな。
でもなぁ、下着同然のワンピースと、買い出し用のメイド服じゃあ…違うんだよなぁ。
「？　この服に問題でも？」
ああ、そうだよ。コスプレしないとなぁ。でも前回以来うちは貧乏でなぁ…。
「コスプレ」と言った瞬間、ミーナの瞳が煌めいた。
あああ、こういう顔する時のミーナってロクなこと考えてないんだよなぁ…。
「昔の風習、『ハロウィン』、コスプレ…」
ホラホラ、なんか衛星サーバーにアクセスしてるし。
「マスター、コスプレ、したいです！」
ああ～、よりによってソレかよ！一番金のかかることを…。
「ダメ…ですか…？」
おいおい、そんなちょっとションボリした顔するなって、美奈を思い出すじゃないか。
「それで、ご近所さんを回りたいです。」
しかしなー、外見がメイドロイドのお前がお菓子もらいに行っても多分くれないと思うんだよな～。
「そんなことないです！近所のハシモトのおじいさんなんてお使いの帰りに通りかかると、あたしの
頭を撫でてくれるんですよ!?あとカメガキのおばあさんも。それに…」
ミーナは軽く20人の高齢者の名前を挙げ、得意そうにしている。
いつの間にか人気者になってたんだなー。
「だ・か・ら！服、作って下さい！」
そっか、わざわざ買わんでも俺のお古に手を加えればいいか、なら節約になるな。
わかったわかった。
「わーい、マスター愛してるぅ！」
ははっ、現金なやつめ。


「わーい、マスター、見て下さい♪」
あー、見てるよ、こりゃ大失敗だな…。
俺がガキのときの服に手を加えたのはいいんだが、如何せん丈が足りなかった。
というか、先に帽子に凝り過ぎて裾の布地を使い過ぎてしまったのだ。
パンツがチラチラしてて、こんな格好で外に出したら俺の世間体がピンチだ。
「えー、可愛いじゃないですか。パンチラですよ～？」
お前、常識モードに戻ってみろ、すっげー恥ずかしいぞ？
「…わかってますよぅ、マスターにだから見せてるんじゃないですか…。」
一瞬、心臓が高鳴った。
「…これ絶対ワザとですよね!?もー、マスターの変態さん！」
だ、だまれー！こっちとら慣れない裁縫してんだ！じゃあお前が残り作れ！
「いやですぅ。」
じゃあその服貸せ！
「ああんっ♡」
なんだ？パンツだけしか履いてないのか？ワンピースは？
「この下に着るにはダサいですよぅ」
お前…、ちょっとそれも脱げ！
「あ、あは、マスター、コーフンしちゃいました？」
俺は力強く頷くと、全裸になったミーナを抱えてベッドへ連れてった。

…その後は俺の欲望のフルコースを満たすため、ミーナのバッテリーが切れるまで奉仕させた。
俺も腎虚になるんじゃないかと思うくらい射精し、ミーナをよがらせてしまった。
ああもう、今日はミーナ自身で後始末してもらうぞ？止められてたガスも戻ったし一緒に風呂だ！

「…マスター…の…えっち…♡」

と、ひと言を絞り出し、ミーナは停止してしまった。
あああ、やばいやばい、30％くらいは充電しなきゃ！
…どうも美奈に似てるこいつに俺は無茶をさせ過ぎてる気がしてならない。
今、美奈が生きててこの姿だったら…そう思うとゾッとする。
従妹なら結婚できるだろうが…美奈本人はどう思うだろう？
答えの出ない疑問を繰り返しながら、俺はスリープモードのミーナを見つめていた…。