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2019-10-24 10:18:03 に投稿
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【掌のバレエ萌え小説】葛藤の遊歩道

by 碓井央

わたしはプロムナードというパが苦手です

プロムナードとはつま先立ちの片脚でポーズをとった女性ダンサーの躰を男性ダンサーが支えながら小さな円を描くように移動して

言ってみれば女性ダンサーの独楽のように回転させるという「踊りの動き」です

クラシックバレエで男女が組んで踊るパ・ド・ドゥでは定番のパのひとつです

ですが脚を開いたポーズをとったまま回転「させられる」という状態は──言い方はよくないかもしれませんが屈辱的な側面があります

操られる人形のように自分の開いた両脚の股間を観衆の視線に曝すのですから低俗な見世物のようでもあります

もちろん観衆が何を観ているか本人には分かるはずもありません──しかもその瞬間にはわたしは客席とは反対側に顔を向けています

でもだからこそ──自分の躰がどのように人々の眼に映っているかを想像すると怖いのです

そしてその恐怖は同時に快楽なのかもしれない──と白状しなければなりません

プロムナード(promenade)は「散歩」「散歩する場所」を意味する言葉ですが、「周囲に見せびらかす」というニュアンスも含んでいます

つまりバレリーナの躰をゆっくりと回転させるこのパはまさにその躰を見せびらかすためのパなのです

わたしは自分のこの恥部を周りに見せつけたいと思っているのではないか──という強い疑いを感じています

少なくとも躰の限界近くまで大きく開いた股間が曝されたその瞬間に罪悪感とともに解放感が生まれるのは確かです

この解放感はたぶんプロムナードのときだけではなく踊りの他の部分でも起きていることなのだろうと思います
ただこの独特の「見せびらかす」動きに「解放されてしまう自分」を特に強く意識させられてしまうということなのでしょう

でもわたしが踊りの舞台に立っているのはわたし自身の意志の結果なのですから──この葛藤は自ら作り出したものです

踊りの表現について叱責を受けるわけでもなく──悪意をもって糾弾されるわけでもありません

ですからせめてわたしは自分の心が生んだこの葛藤をありのままに躰のすべてを使って観衆に「見せ」なければなりません

複雑にねじれた心を剥き出しにして踊る──それがいまのわたしにできる精一杯の振る舞いなのです

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