【掌のバレエ萌え小説】後背のパ・ド・ブレ
by 碓井央
前回の定期発表会で中等科生徒向けに振り付けされた白鳥の湖のアダージォを踊りました
躰が成長途中なので高いリフトはせずに別のパで置き換える形になっていました
原作では曲の半ばあたりでオデットが片脚で小さく飛びながら斜めに進んだのちに王子が両腕で高く真上に彼女を差し上げてリフトしますが
該当する部分では王子役の男の子に背後から支えられながら私が上半身を前に倒し気味の姿勢で小刻みに両脚を動かしながら弧を描いて移動するのです
男女が体重差がないので支えるときにはしっかりと躰を触れ合わせて支えるように指示されていました
その結果──このパ・ド・ブレのシーンでわたしたちはお互いの躰が深く「つながっている」ような錯覚に陥ることになりました
衣裳を着ているのですしほんとうの意味で「つながっている」わけではないのですが
それでもわたしたちにとってその瞬間は躰も心もとても深く「つながっている」ように感じられたのです
もちろん王子役の男の子とそんな話はしませんでした──でもわたしには彼も同じように感じていると分かりました
この振付が偶然こうなのったかそれとも何か理由があって仕組まれたことなのか──それは今でも謎のままです
ただ──この発表会が終わった後わたしたちの関係がいろいろな点で深くなってしまったのは確かです
わたしたち自身がやりかたを工夫して「つながっている」感じを再現するのは難しくはなく
なによりもこの濃厚な快さをともにすることをお互いに強く望んでいると気づいてしまったからです
今日もお稽古が終わった後わたしたちは他の生徒たちに気づかれないようにしてわたしの家の近くで落ち合います
そして鍵をかけた部屋の中でわたしたちは「つながっている」錯覚を起こすための秘密の儀式をするのです
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