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2019-08-19 12:29:51 に投稿
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レスレア

by いたうみきたか

ここは、かつてベレスが教師としてガルグ=マクで過ごしていた時に
使っていた部屋である。

先の戦争が終わった後ベレスは教師を辞したが、
現在の私室への引っ越し作業をろくに行えていなかったことや
この部屋への思い入れから時折ここで寝泊まりすることもあり、
半ばベレスの第二の私室となっていた。

ベレスはとうに士官学校の関係者でなくなったのに
寮の一部屋を私物化することに申し訳なさを感じていたが、
物置というという名目でセテスが融通を効かせてくれていた。


「ここが、あなたがずっと過ごしていた部屋なのですね」

寝泊まりをするためだけの生活感に少々欠ける部屋を
レアは感慨深そうに眺めて呟いた。



レアもベレスも戦後の復興作業の方針の打ち立て、民への救済、
体制の大幅な変更により生じた混乱への対応と、次々に業務へと追われ
多忙を極めていた。
それでも週に一度は共に過ごせるよう時間を合わせ、ふたりは甘いひと時を過ごした。

この日はベレスから部屋のことを聞いたレアが是非とも部屋を見てみたいと
いつになく強く強請ったことから、この部屋で共に過ごすに至ったのである。


ベレスは特に面白いものもないだろうと告げたが、レアは
あなたのことをまた一つ知れて嬉しいのですと柔く微笑んだ。


レアにはベレスに対し負い目があった。
それはベレスの中の”お母様”ばかり見ていたことである。

ベレスへの期待は女神の器としての期待であったし、
ベレスの瞳と髪が女神の眷属特有の色合いに染まった際には彼女のことは二の次で
己が悲願の達成にばかり逸っていた。

ベレスが恩人の子供であることを認識してはいても
やはりどうしても彼女の背後の女神ソティスにばかり目を向けていた。

変化の切っ掛けはレアがベレスに困難な運命を強いたことを赦したのみならず、
レアの生還を喜び、傍にいることをジェラルトの遺品の指輪に誓った時だろうか。
レアはこの時、初めてベレス自身に真に目を向けたのである。



「ベレス…この部屋であなたは何を感じ、どう過ごしていたのですか?」
飾りを取り去った碧の髪をベレスに摺り寄せ、レアは甘えるように問いかけた。

ベレスは抽象的な質問に少々戸惑った様子だったが、レアが初めの日から
一つずつ教えてほしい事を伝えると、彼女らしく言葉少なくではあったが
彼女なりの色を添えてぽつりぽつりと語りだした。



思い出話を聴きながら眠りに落ちたレアの頭を慈しむように撫で、
頬に口付けると、ベレスもまた眠りに落ちた。

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