ニジエスマートフォン版

2016-11-05 14:53:24 に投稿
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代替

by 紗野誠隆

 いつも気丈に振舞っていた満潮が泣き出しそうな表情ですがり付いてきたのはいつの夜だったか。
「……お願いがあるの」
 そう切り出した満潮の提案は酷く不健全で背徳的なものだった。

「お……しぉ……っ。おおしおぉ……」
「かわ、かぜ……っ、かわかぜぇっ」
 自ら視覚を封じ、網膜に焼き付いて離れない各々の大切な者をそこにある温もりに重ね嬌声をあげる。
大潮とは、満潮がかつて居た第8駆逐隊の僚艦――そして満潮の想い人だった、らしい。
『かつて』『だった』。
これが意味する通り、どちらも今は既にこの世には存在しない。
所属していた大半の艦の喪失により第8駆逐隊は解体され一人残された満潮は、同じく先日喪われた私の妹、江風の穴を埋める形で第24駆逐隊に編入された。
近しい者を喪ったもの同士、利害は一致するのでは――?
満潮の提案に対し疑問に思う所が無かった訳ではないし、そもそも私と江風は『そういう関係』ではない。
だがそれでも、私は満潮の提案を受け入れる事にした。
今にも壊れてしまいそうな満潮の表情に危機感を覚えたのもある。
しかしそれ以上に、満潮が私を求めてくれた――第24駆逐隊の旗艦なんて名ばかりで、戦果もあげられず誰からも必要とされない私を満潮が必要としてくれた事が嬉しかった。
「おぉしぉっ。おおしおぉ……!」
 ……分かっている。満潮が求めているのは『私』じゃない。喪った想い人の温もり。
そう、分かっていた筈だったのに。
「あぁ……っ、いい……いぃのぉ……おおしおぉ……!」
 満潮が淫らに身体を捩り、熱を帯びた声を上げる度に私の存在が『大潮』に塗り潰されてしまいそうな錯覚。
ねえ、私は誰なの……? 私の名前を呼んでよ、満潮……!

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