訓練中（差分有）

by 紗野誠隆

地下訓練室へようこそ。歓迎するよ。
ん、そこの村雨かね？
なに、気にする事は無い。彼女は協力者だ。
君達に来てもらったのは他でもない。
ある訓練を受けてもらう為だ。
もし深海棲艦との交戦中に仲間が大破し、航行不能になったとしよう。
曳航出来るならまだ良いが、敵への機密漏洩を防ぐ為、大破した仲間を自らの手で処分するという決断を下さねばならない時もある。
無論そうならない事を願っているが、仮にだ。
私が君達に仲間である艦娘を処分しろと命令を下したなら、君達は躊躇無くそれを実行出来るかね？
……出来ないだろう？
だからこそ万一に備え、君達には仲間に躊躇無くその砲を向ける非情さを身につけて貰いたい。
さて、訓練の内容だが。
ここに一本の鞭がある。
君達にはこの鞭で順番に村雨を打って貰いたい。
ああ、君達が特に村雨と親しい事は知っている。
だからこそ君達を呼んだのだ。
対象が親しい仲間であればあるほど、この訓練の効果は高い。
『駆逐艦"村雨"は敵の砲撃により大破し、機関部に甚大な被害を受けている。船底から浸水あり。船体は傾き始めており曳航は不可能だ。君達は村雨の雷撃処分を命じられている』
その鞭は村雨を処分する為の魚雷に等しい。
村雨を本当に沈めるつもりでその鞭を振りたまえ。
……なんだ、何を躊躇している？
出来ないというのなら、君達を鞭打たれる立場にしてやっても良いのだぞ？
……そうだ、それで良い。
誰だって我が身が可愛いだろうさ。クク……。