孕触腔
by FW
昔、村の裏山を八分ほど登ったところに横穴があってな、それが を祀る洞窟だった。
は人の胎で殖えるが、もともと土の下のものであるから、洞窟の外には出られぬ。
隠し子、忌み子の娘はそこに捨てることになっておった。
長年蟲が巣くって広く大きくなった洞であるから、中でかなり長く生きた者もおったらしい。
若い時分にけものの死骸なんかを供物として放り込みに行ったことがあるが、はらわたのようにぬらりとした蟲の発する臭気は入り口からもわかるほどのものだった。
この風習は数年前に立ち入った異国の旅の一団が、蛮族の風習だといって山に向かい、洞を焼き払ったことで失われた。
同時に中の者共は連れ出されたが、まるであの洞の蟲に心を奪われたように、人と関わろうとしない。
日がな虚空を眺めているから、世話をする人手も要る。異国の人間もすでに去った。
どんな大義があってのことか知らんが、この村の者の目から見れば、却って不幸なものを増やしただけとしか取れぬのだ。
―年老いた語り部
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